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【2018年9月号】奇跡の幼児生存 ― 僥倖か、平素の努力の結果か?

この8月15日、山口県周防大島町で行方不明となってい た2歳の幼児が、大分から来たボランティアの老人に発見さ れるという事実があった。これは偶然に街中で起こったこと でそれほど注目するべきものではないかもしれない。しかし、 偶然と僥倖だけでは済まされない教訓が含まれたというべ き事柄だと思われるので、敢えてこの欄で取り上げておきた い。

30度になる真夏日、周防大島町で行方不明となっていた 藤本理稀ちゃん(2歳)が、地元の人さえあまり行かない山中 に迷い込んで68時間、はだしの足を沢水につけていたとこ ろを、大分から来たボランティアの尾畠春夫さん(78歳)が見 つけ出したという。尾畠さんは過去にも行方不明となった子 供の捜索ボランティアとして2歳男児の発見にかかわったこ とがあり、このたびもこの経験を活かしたボランティアとしては るかに遠い大分からこの地を訪れたのであった。迷子となっ た男児が祖父と連れあいながら離れ離れになってしまった 場所を参考に山道を進んだところ30分ほどで沢の真ん中 の苔むした石の上に座るこの子を発見したという。用意して きたバスタオルでこの子を包んで母親に引き渡した。この子 は、祖父と離れて、おそらく沢谷をやや登ったが、そこで石の 上に座り込んで足元の流れの水を飲んで途方に暮れてい たのであろう。ただ、あまりにも幼くてさらに沢を登るとか歩き 回る元気はなかったのだろう。そこで座り込んでしまったとこ ろを尾畠春夫さんが、これまでの経験を活かして、30分ばか り上ったところで発見したというのが実話である。まったく偶 然の集積ではあるが、尾畠さんの努力の結果ともいえる側面 も否定できないかも知れない。児童が幼くてあまり動き回ら なかったことと合わせても、筆者は単なる偶然の重なりでは なく、期せずして奇跡が起こったと思えてならない。日常的な 事柄で、なんとなく見過ごしがちな事柄だが、重要な教訓と 思えてならない。  

(会長・板東 慧)


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