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【2017年8月号】劉暁波氏の死を巡って問われる中国当局の問題点

獄中でノーベル平和賞を受賞した中国の作家、劉暁波氏が7月13日に死亡したことを巡って世界各国から中国当局に対する批判の声が上がったが、中国外務省は「関係国がこの問題を利用して中国の内政に干渉すべきでない」との談話を発表した。これらの問題を巡っては国営新華社が英語版で速報した以外、国内では一切報じられず、CNNなどの海外のテレビ放送もこれに関連した報道が始まると中断する状況が続いているよ うであり、まさしく異常事態が続いている。

そもそもこの問題は、劉氏が国民の民主的な行動に対する中国政府の抑圧的な態度を批判し、民主主義を求める嘆願書「08憲章」を提起したことから、氏を11年にわたって収監し、発病して国外での治療の要望が出たのに対してそれを認めなかったし、報道規制の中で若者は劉氏の名前さえ知らず、一般市民の間ではその死さえも知らされていない状況が続いており、劉氏の妻は住宅内での軟禁状態が続いているのである。

これに対してEU・米国・日本はじめ世界各国から劉氏の追 悼とその民主的業績への賞賛の声が高まった。中国当局はこ れに対して、法律の規定に基づき人道主義を出発点にドイツや 米国からの医師も招き、医療部門を上げて全力で治療したこと を述べて、このことが「純粋に内政に属し、各国があれこれ言う 権利はない」と各国の批判に反論している。

欧州・米国・日本など主要国はこれに抗議しているが、中国の経済が好転し、西側の貿易相手国として有力であることから、中国の報復を恐れてこの抗議を徹底しているとはいい難く腰が引けている面があり、これに便乗した中国がこれらの抗議を無視している傾向があり、事態が改善されないのである。

しかし、もともと中国人民共和国は、第2次大戦後の1949年、大戦のもたらした民主・人権擁護・恒久平和への世界的な流れに助長されて永年の植民地状態から脱却できた結果成立したものであり、戦後世界の象徴の一つでもあったわけで、国家の独立そのものが戦後民主主義と平和主義の恩恵を受けているはずである。中国は、しかも社会主義を掲げ人民民主主義として発展してきたし、今日ロシアは社会主義から離脱して中国こそが社会主義のモデルとなってきたのである。ところが中国はその後必ずしも社会主義の王道をたどっておらず、市場経済を採用し、社会主義というよりも国家資本主義の一形態となり、さらに領土拡張や南シナ海における島嶼を占拠して軍事基地化を積極的に進めるなど、まさしく帝国主義的国土拡張を進めており、アジアの緊張と不安定の推進者となっているかの傾向がある。大いに警鐘を鳴らすべき状態にあり、西側主要国の日和見主義がこれを助長している傾向もみられる。

劉氏に対する中国当局の態度はこれと共通するものであり、平和と民主主義の危機の問題として中国のこの態度を抑制すべく世界の世論を喚起すべきであろう。(会長・板東 慧)

 


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