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【2014年11/12月号】安倍首相と握手する習金平主席になぜ笑顔がないのか

11月10日、北京で開催されたAPECにおいて、2年半ぶりの首脳会談で安倍首相と対面した習近平中国主席は、握手しながら安倍首相がにこやかに語りかけるのに対して、やや硬直した顔で笑顔も見せず、しばらくしてカメラの方に硬直した顔を向けながら、一言もものを言わずに終わった。これは世界の何億もの人びとが見ただろうし、特に日本人の何千万かの人びとが確認して不思議に思ったことであろう。それは外交上首脳が握手する場合、普通は笑顔で会釈するものだし、この時日本のTVは直近のロシアのプーチン大統領や、韓国の朴大統領との対面の様子も映し出したが。そこでは確かに習近平は笑顔を見せていたから奇妙に思えたことは間違いない。

もともと、習近平主席は安倍首相との首脳会談を、靖国問題や安倍政権の歴史認識問題などを理由にして敬遠してきたが、就任後2年半にもわたるこの不自然な状態はどこからみてもおかしいだけではなく、日系企業が中国側の反日キャンペーンや妨害などで中国からの大量撤退や中国離れが現実に中国経済自身に少なからぬマイナス影響を持ち始めたことは事実である。いわば、自動車・大規模重機とスーパーマーケットなど流通企業以外は、中国での事業展開がマイナスになる可能性が出てきた。

もともとこれらの産業は日系企業のサポートなくしては、中国自身の自前の事業展開が困難である。自動車産業を見ても、鉄板そのものは日系企業の援助によって一定の質的水準を維持できるようになったが、未だ万全ではないし、機械部分も何とか中国製品で賄えるようになったとはいえ、その心臓部分や特にコンピュータなどの技術部分でとても中国が自力で製造するには至っていない。このような問題が日系企業を排除するなかで明確になってきた。しかも、中国は高度成長過程が終了して産業の各分野で過剰生産によるマイナス成長要素が顕在化してきたし、不動産価格は大幅に低下し、住宅は過剰化し、不況期に入ってきた。

例えば14年8月の工業生産の伸び率は5年8カ月ぶりの低水準となったが、内容的には14年9月の鋼材価格は94年12月を100として89に低下し、14年7―9月でGDPは7.3%と5年半ぶりに低下し、年間の経済成長率は過去の年率10%程度から7%程度に低下し、産業的には非鉄金属・海運・石化・化繊・建築・航空などの上場企業の大半が赤字決算となった。

しかも、従来からの利権と汚職にまみれた政治と高級官僚の腐敗と汚職は構造的なもので所得格差は極度に拡大し、一般庶民のこれらの腐敗に対する不満は極点に達し、そのために習近平政府は、政府高官の汚職の摘発から、かつてから禁じ手といわれるトップ政治家の汚職の摘発を進めている。

中国では、情報は極度に統制されているが、インターネットは普及し、今やこのような利権政治家や利権高官の告発や摘発はインターネットによって市民から拍手喝さいを浴びるようになっている。習近平はこれに乗って摘発を進めている。市民権としての民主主義は存在しないが、このような一種の権力闘争としての民主主義が存在するかのようである。しかし、今回のような習近平のしかめっ面は事前に打合せしたうえでの演出プランが用意されたもので、それに沿って習近平が動作した結果ということがメディアに報じられていた。中国4000年の歴史の中でこのような奇妙な状況が習近平の微笑のない首脳会談での対面を創ったのではないか。(伴) 


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