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【2014年7月号】F I F Aとブラジルにおもう

FIFAブラジル大会が始まり、ジャパンチームは初戦でコートジボワールに敗れたが、日本国中も結構な興奮である。このようなときにいつも思うが、これら国際イベントに関するわが国メディアの取材のレベルの問題である。一般にわが国のメディアは海外事情について、国内感覚で判断して海外事情を考慮しない傾向が強いし、場合によってはその地の常識と離れた判断で記事が提供されることが多いことである。

今回もブラジルではFIFAに関する準備不足で会場設備がほとんどできずに開会に間に合わないのではないか、といった報道が圧倒的であった。私は1990年代からブラジルにしばしば出かけ、いろいろ学んできたが、ブラジルという国はしばしば危うげに見えて案外しっかりしたところがあるので、日本のメディアのこの種の報道は余り信頼しないが、FIFAを開いてみるとやはり会場の準備
も整い、しっかり競技が行われていることが確認できた。日本人は一般に几帳面でこの種の準備や計画をおろそかにしないのは外国にも知られているが、日本型の行動様式でなければ認めず安心できない傾向がある。

日本のマスコミの報道は日本人的常識の範囲内で、この種のことに判断が及ばない傾向がある。今回でも、ブラジル国内では、その経済的困難からFIFAの開催そのものにも不満やブーイングが強く、大イベントに費やす財政力があるのなら、それを経済建設や生活防衛に回せという意見が多く、この国際イベントの直前にも教員組合や公共交通労組のストライキが続き、これが収まらないのでないかと報じられていたが、さすがに国際イベントでしかもサッカーFIFAが始まるとぴたりと止まった。これも日本のメディア感覚では公共ストなどはあってはならないなどという先入観があったといってよい。

 ブラジルは人口2億、人種的には白人5割、混血4割、黒人6%だけれど、最大都市サンパウロの人口1千万、うち日系人約100万で、すでに日系移民は100年近い歴史を持つ。ラテンアメリカで最大の国家で、しかも唯一ポルトガル系で、他の国はすべてスペイン系なので異なった文化を持つ。日本のサッカー選手団に対する現地サポートの人数はまた圧倒的である。

産業的にはあらゆる資源に不足はなく、国土・人口も圧倒的な規模で、経済的にはやや大ざっぱで経済計画にも失敗はあり、日本人のセンスから見ると雑に見えるが、それでいてこの巨大国家は
「やるべきことはやる」という決断力も能力もあり、ダイナミックで、親日的で日本の学ぶことが多い。筆者は1990年から隔年に9回、経済調査や講義で訪れ、広い国を隈なく回ってこの国の風土と気質を知った。90年代の初頭はロシア・ブラジル・メキシコの3大国が超インフレで通常の支払に0が7つつくような事態を経験し、いずれも数年で克服した。この歴史からみてもそのダイナミズムはサッカーの強さとともに我々が学ぶべき多くを持っている。(伴)
 


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