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【2014年5/6月号】不可解な事件−理研・小保方処分

新たな万能細胞とされるSTAP細胞の作製という画期的な研究成果を英科学誌Natureに発表した理研・小保方晴子氏を研究ユニットリーダーとする論文が、1月30日発表されたが、その後、「画像が不自然」とする指摘があり理研が調査委員会を設置して調査を開始し、Nature誌も調査開始を発表した。この間3人の調査委員の論文にも切り貼りなどの疑いが指摘され、2人については理研が予備調査を始めた。そして、4月1日になって理研は調査報告を発表し、「データの加工で結果が真
正でない。改ざんと捏造の疑いあり」として、論文の撤回を勧告したが、小保方氏側はこれを不服として弁護士を代理人として弁護団による不服申し立てを行い、4月9日に記者会見を行い、再調査を申し入れている。

 この間、理研側は長期にわたって、不正認定に関する詳細な理由を示しえなかった。そればかりか、調査委員長に就任した石井俊輔上席研究員の論文にも画像の切り貼り疑惑がかかり、石井氏は「不正でない」と抗弁したものの認められず4月下旬に委員長辞職に追い込まれ、委員長は渡辺弁護士に交代した。

 小保方氏側の代理人の弁護団はこの間一貫して不正申立書や補充書を相次いで提出し、反論や質問書で不正結論の撤回や研究の名誉回復に努めているが、理研は調査委員長に弁護士を据え、懲戒処分を決定するなどの準備に入ったようで、まったく「結論ありき」という態度で法廷闘争への流れは止まらないようである。

 しかし、以上の経過に見るように、もともと理研当局の態度が研究機関としての論理性を欠いており、共同研究者の中から若輩の女性のみに「不正」「偽造」の烙印を押して、その共同研究者は無罪放免というシナリオはいかにも胡散臭い。研究機関内部には競争もあり、他人を追い落とすような仕組みもありうる。

しかも理研は日本最高の研究機関であり、文科省によるより高い格付けが準備されつつあったことから理研自身の体質強化のような問題もあったかもしれない。わが国最高の実績を持つ研究機関として何か変な要因が働いていたのかとも推察される。理事長の野依氏はノーベル賞受賞者として高い評価を持つことは言うまでもないが、この問題の最初の理研による小保方評価はいかにもお粗末であり、この発表の背後にある問題の無気味さを否定できない。なぜ発表前に内部での協議
や検討が十分なされなかったのか、問題が出た後に知的最高機関としての格調が保ちえないのか。まことに残念である。(伴) 


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