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【2011年3月号】'11春闘を通じて賃上げと雇用の本格的改革の道を開け

久方ぶりに1%の統一要求を掲げた連合の’11春闘がスタートした。永年続くデフレ不況と雇用不安の中で、いわゆる春闘も低迷し、定期昇給の確保さえ危ぶまれる時期が続いたが、今年は明確な賃金引き上げを目標に掲げた点で評価される。しかし、現実にはトヨタが賃上げを見送り、電機も全体として賃上げ要求に至っていない。当然産業・企業による不均等は免れないが、沈滞気味であったこれまでの連合春闘が、一応は賃金引き上げで気分を揃えることとなった。経営者側は相変わらず渋い表情であるが、この春闘で労使関係に新たな地平を開くことを労使共に心がけるべきである。

まず第1に、上場企業の3月期の連結経常利益が前期に比べて53%増加する見通しである。新興国の経済成長が景気を牽引し、米国の需要回復が著しく、日立や東レなど主要企業が相次いで業績予想を上方修正し、全体に3社に1社が金融危機前の業績利益水準を上回るという(日経新聞2月11日朝刊)。トヨタ・ホンダ・富士重など自動車産業の販売台数も危機前を大幅に上回っている。

第2に、この間、新規設備投資が低迷し、大企業は大幅な内部留保を抱え、従来の業種枠や国境を越えた企業統合や合併が積極化している。しかし、メガバンクは大幅な政府資金投入によって大型化し、資本蓄積も大幅化しているにも関わらず、法人税はゼロであり、上場企業含めて法人税を支払っていない企業が支払っている企業をはるかに上回っている。その結果、企業の内部留保が大幅に蓄積され、これらを見込んで、株式市場は3月決算以降は近年になく活性化するとして関係者はざわめいている。

第3に、確かに、原油はじめ資源価格が需要高騰のため、経済の厳しさはある。

第4に、政府の無策のため、産業上げての新技術を含むイノベーション投資や産業構造改革が大幅に遅れ、グローバル競争での出遅れは否めない。これと関連して、雇用改革は遅々としてすすまず、政府は改革に遅れをとり、企業は従来慣行から脱却できず、労働組合もこれらに挑戦して新機軸をおしすすめるに至っていないため、新規大学卒の内定率が68%などかつてなく悪く、求職者は1人当たり平均10社をトライしても内定に至らないという悪条件が続いており、1/3が留年等を考えざるを得ないという。それでなくても縮み志向・内向化する若者が、日本の将来そのものに期待を持てず、沈滞社会を招く可能性がある。ここは、政府も経営者も労働組合も、多様な雇用の可能性を開くために、終身雇用のガンジガラメのシステムを改革し、雇用身分差を撤廃し、労働移動によって損失を被る年功制を打破し、新規学卒4月採用システムという制度を撤廃して年間自由時期採用、中途採用差別の撤廃など抜本的な改革に共同して当たる積極的努力が必要である。新規採用全員外国人とか外地採用とかいう企業も増えてきた。このような雇用の自由化を本気で進める必要がある。本格賃上げを掲げた春闘を通じて、日系企業の本格的グローバル化を進めるなど、労働組合も本気で取り組む必要がある。連合が民主党の選挙に協力して、いかほどのことが労働組合・労働者にとってプラスになっているのかが問われている。(伴)


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