本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2009年8月号】 「政治の貧困」極まれリ―2人の「バカ殿」で迷走する日本の危機―

麻生首相 の解散予告で総選挙日程が決まった。ただ、ほとんど任期満了と変わらない日程で、総理のイニシアティヴらしいのは両院議員総会での麻生降ろしを封殺するた めに解散をわざわざ予告したことくらいだろう。選挙管理内閣に選ばれて約10か月、在位期間の延長に腐心して、日教組問題での失言で失脚した中山、泥酔で 世界に名を売って失脚した中川など、緊張感のない閣僚に対する任命責任、国民的に支持の高かった郵政社長責任を追及した鳩山を辞任させ、大幅な内閣支持率 の低下に至った人事問題の責任は大きい。結果的に、40%を超えていた当初の内閣支持率が20%を割りこむにまで低下する中で、小沢問題などで一時期支持 率が30%程度に回復していたにもかかわらず、優柔不断がゆえに解散を決断できなかった。政策的には思いつきが目立ち、閣内不一致の連続であった。「ブ レ」が多いといわれたが、原則があってブレていたのではなく、もともと原則そのものがなかった。まさしく、KY(国民の空気が読めず)で、自己中で、欲し いものがあれば周囲が用意してくれるものと思う「バカ殿」ぶりが最大の問題であった。政策的には閣僚の多大の努力があって多くの新法を成立させ、成果が多 数みられたにも関わらず、それを帳消しにする「バカ殿」ぶりが国民の信頼を失った。最後には両院議員総会の開催を避けて自己保全を図り、自民党を「ドロ 舟」に陥れるまでに至っている。当然、離党者による新党結成や離党はしないが党内にとどまりながらの分裂選挙となるのは必至で、自民流動化による政界再編 成に進むことは明確になってきた。

さて、自民党のこのような劣化で、政権交代はほぼ確実視される。ただ、民主党の勝利は自民劣化という敵失にもとづくところが多い。何故なら、小沢問題に 加えて、鳩山代表の「故人」政治献金の「闇」についても説明不足とする国民の声は圧倒的だからである。自前の金を他人の献金に見せかけることも、多数の故 人の名義を借用することも誰が考えてもありえない。このようなごまかしを担当秘書の首を切って説明責任を果たしたとする幼稚さは、とても通用するものでは ない。その意味でこの鳩山代表の行為もまさしく「バカ殿」である。しかも、これで説明責任を果たしたとする民主党幹部や議員諸公の幼稚さも政権政党として は大いに気になる。新しいマニフェストからは、年来の主張である「自衛艦によるインド洋給油反対」がさりげなく消え、突然の鳩山代表の「米軍の核持ち込 み」容認声明など、党内コンセンサスのない勇み足も気になる。自民党との連立によって発足した村山内閣において、社民党の長年の政策「自衛隊不承認」が一 夜にして消えたのと同じような現象が起こりそうである。この種の不信と不安を民主党は克服しないと政権の合理性と安定性がないことを肝に銘ずべきであろ う。(伴)


地球儀 の他の最新記事