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【2004年11/12月号】米大統領選と日本の球界オーナー

アメリカ 大統領選は、ブッシュの大勝に終わった。当初優位と見られたブッシュがTVディベイトのイラク戦争責任でかなり不利には見えたが、キリスト教原理主義で保 守層を掘り起こし、テロの恐怖を一貫して強調して逆転して勝った。これに対してケリーは、イラク戦争に当初は賛成しつつブッシュの責任追求に矛先を向けた り、ベトナム戦の英雄気取りや話題を多様化しすぎて、TV論争では勝ったかに見えたが、首尾一貫性に欠けた。さらに、妊娠中絶問題など、アメリカの保守の モラリズムと国内治安の重視という風潮に敗れたといいうる。この中ではアメリカのマイノリティ移民やユダヤ系・ヒスパニックなど、従来民主支持だった庶民 の共和支持への転換や元来民主支持だった労組の弱体化などの階層別要因が背後にあると見られる。この傾向は先進国における治安やテロ対策への市民の関心の 高さと安定志向が、生活意識の保守志向を高めていることと対応する。

ところで、この大統領選の最中、わが国ではプロ野球問題で世論が沸騰した。初めての選手ストを市民の圧倒的多数が支持し、いい加減な経営体質でプロ野球 のリストラを図り、1リーグ制にもっていこうとする実力者オーナーのナベツネ・堤・宮内たちとこれに追随するふがいないオーナーたちへの憤懣が高まり、選 手ストは世論を背景に圧勝した。また、2リーグ制維持が可能なベンチャー企業・ライブドアの近鉄買収を理由もなく断り、選手ストの結果1リーグ制がどうや らうまくいかないと見ると、裏から手回しよく2番手の楽天を押出し、これを新球団として参入させるなどという手の込んだ小手先を使ったともいわれるオー ナー達への批判が高まった。オーナー達による審査委員会では、恥ずかしげもなく「楽天の経営が安定しており、ライブドアの経営が不安定で、球団の赤字に耐 えられない」などと称して選別した。もともと、「いかに球団経営を発展させるか」を2つのベンチャー企業が競って提案し、日ハムの北海道進出・Jリーグ新 潟進出などの地域密着型スポーツの草の根経営の成功例が紹介されたにもかかわらず、依然として「赤字経営」を前提にして、成功可能性のあるベンチャービジ ネスを斬ったのは、まことにおこがましい。このようなプロ野球オーナーの自己チュウは、だんな芸としての宣伝費程度として、高度なスポーツ技術者を経営の 道具程度にしか見ない長年のプロ野球オーナーたちのお粗末さを露呈した。

そうこうするうちに、世界一の富豪といわれた堤も読売ナベツネも共に、株式をめぐる企業犯罪まがいのからくりを露呈した。企業合併の真似ごとになったオ リックス・バファローズでの選手の居心地も悪そうである。彼らオーナーが果して他企業を審査する資格があるのか、と疑われる。保守主義というのなら、せめ てブッシュに学んで、「モラル」を大切にしてもらいたい。かくて、ベンチャーの大物ソフトバンクのダイエー買収は、オーナー会の審議にもかけられず、ライ ブドアには西武売却の打診まできているという。何という茶番か。おそらく旧型のオーナー達が撤退した近い将来に、はじめて健全で採算のあう野球ビジネス・ モデルが育つであろう。球団の赤字の反省もなく、合併や2リーグ制解体を企む手前勝手な企業屋はさっさと球界を去るべきではないか。(伴)


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