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【2003年2月号】「国際重層騙し合い」の結果は如何に―冷戦崩壊後最大の政治ショウ

査察を受け入れたイラクに対して、徹底した査察をすすめている国連は、なかなかサダムの尻尾を掴みかねている。アメリカは確信を持ってイラクの有罪性を暴 露しようとするが簡単には掴めない。しかし、この手続きがなければ軍事攻撃はできないので、何とかして軍事攻撃が説得力を持つような情報を求めているとい うわけである。ヨーロッパもロシアもアメリカにOKを与えたいという側面と、その大義名分とに苦慮しているようにも見える。しかし、その裏で、ロシアもフ ランスもドイツも、イラクの石油に関心があるだけでなく、武器販売の利益を捨て切れない。さらに中東での政治的ヘゲモニーを確保したいし、イスラエルを抑 制したいということもあろう。

サウジをはじめ中東諸国もまた、サダムをのさばらせたくないと同時に中東でのヘゲモニーを失いたくない。サウジは国内の批判もかなりあるが、アメリカの 基地までおいている。ヨルダンも然りである。アメリカにとっても彼らにとっても、ビンラディン一派のテロとサダムのかかわりが明示的であればほとんど武力 介入に躊躇はないが、その証拠は確かでない。湾岸戦後のクルド族自立への弾圧で化学兵器を使ったことは明確だが、現在はその証拠がでていない。アメリカ一 極一端主義が強いといっても、アメリカはフライングして孤立することを恐れる。英のブレア首相がアフガン以来、イラク問題にしても積極的だったが、国内批 判もあり、ややトーンダウンしている。この状況はまさしく米欧ロ中東の4つ巴の一種の「騙し合い」に見える。

ところで北朝鮮は、KEDO約束に反して核開発の継続という完全な違約を自ら暴露したのに、アメリカはあくまで外交手段で解決として、イラクとは正反対 の対応をしている。韓国に駐留米軍がおり、あまりにも北朝鮮と近すぎるので、かりに武力で勝利可能としても犠牲も多いことが理由でもあろうが、ロ・中は 「核兵器廃棄」を説得するといっている。これとのかかわりもあって、イラクと北朝鮮に同時に武力介入することは、国際世論からもまずいということか。ま た、韓国大統領選における国民の選択にも配慮せざるをえないだろう。むしろアメリカはイラクへの対応の仕方を北朝鮮に見せつけ、核廃棄後でなければ対応し ないとして動揺を狙っているとも見られる。

この最中に小泉首相はロシアへ行く。対ロシア懸念解決が課題としても、当然北朝鮮問題打開も重要だろう。恐らくあっと驚く何かが出てくることは、北朝鮮 との接触より、新たな展開の可能性があるとみられたが、現時点では明らかでない。ピョンヤン会談は、その後のテコ入れがなければ敗北が見えたが、拉致被害 者を返さないという従来と異なる外交姿勢で優位に導いた。ポピュリズム外交もそういつもうまくいかないが、面白くなるやも知れぬ。大いに期待したいが、ま た食料援助先行のようなバカはやるなよ。(伴)


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