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【2015年10月号】災害予報と避難対応の抜本的転換を

近年における我が国の自然災害の発生は従来と異なった激しさと兆候が目立っている。その原因は未だ明確といえるほど研究は進んでいないが、台風などが7月頃から発生して大規模な被害をもたらすことや雨量が欧米と異なった熾 烈さを増していることである。ごく一般には地球温暖化などが影響しているとも思われるが、定かではない。もとよりこの傾 向は我が国だけではなく、北米でも西欧でも従来と異なった激しさと様相を示していることが次第に明らかとなっている。

まず、阪神・淡路大震災に東日本大震災は我が国近代 にとって予期せざる規模と形態であったし、最近の火山噴火 も頻度と規模が尋常ではない。しかもこの間の津波の発生も 稀有のものだし、今回の北関東の暴風と豪雨も近年経験したものをはるかに超える。日本列島はまさしく呪われたかの如き災害の頻発に遭遇している。
 
気象関係機関も災害対応機関もそれぞれ努力はしてい るが、このところの大災害はほとんどが「想定外」で、救難に遅れをとっており、避難や救難の警報の発信に遅れをとっており、対応に困難をきたしている。もとより人命の救助には 比較的対応は出来ていようが、危機情報提供に大幅な遅 れや差し違いがあり、救われるべき人々が犠牲になっている場合が多い。もとより、警報というものに対して初動対応が遅れて結果としてマイナスを被ることもある。

今回の鬼怒川の堤防決壊は、我々は日光や鬼怒川温泉 という観光地の平素緩やかな流れが決壊によってあれほどの濁流が人家や居住地を襲う恐ろしさは予期できなかった という他はない。
       
この「想定外」という事態は本来「想定内」になければな らないはずで、その証拠にすでに体験上も綿密に地域の歴 史をたどれば予測可能であり、研究上も予測は可能である。 問題はそこまでシビアに予報と対策の視点を詰めていないことにある。一種のマンネリズムからの脱却の視点が欠如していることに相違ない。研究機関も行政機関もこの期にあたって、従来の基準を抜本的に見直し、ハードルを高めるための基準を確立し直すための行動を積極的に起こし、その議論 を市民の中に巻き起こすことこそ重要である。既に現地では 避難や警報の遅れに対する不満や告発が起こっている。そのことも重視して改革に取り組むべきであろう。
(会長・板東 慧)


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