本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2009年2月号】 不況にならないと雇用のセーフティネットを考えない労使関係でよいのか

金融危機 に関しては、当初わが国はサブプライムローンの保有が少なくてそのマイナス影響が少ないために円高にもなっているとする、やや楽観的な見方があった。しか し、世界全体の需要収縮の影響は大きく、実体経済への打撃が大きいだけでなく、デフレ予測が強くなって全体のマインドの縮み志向が強まり、大幅なリストラ 気配が濃厚になってきた。輸出企業中心になりふり構わぬ非正規・期間雇用者の解雇・派遣切りが年末という時期に集中した結果、強烈な社会不安をもたらし た。しかもキヤノン、トヨタといった日本経団連現職・歴代トップ出身の企業をはじめとして優良企業が、何の予告や準備的対応策もなしに、契約期間中途も含 めて大量解雇を進めた点に今回の特徴がある。

長いバブル崩壊不況で辛酸を舐めた大企業が、内部留保を最大限確保し、株主への配慮を前提に、しかも正規従業員のリストラは避けつつ、非正規に対しては ほとんど物件費的処理で不要なものは切り捨てるという態度に出たことが社会不安を増大させ、デフレ到来不安を掻き立てたことになる。

グローバルな競争激化の中、企業防衛に鋭敏なことは否定されるべきではないが、正規従業員と非正規従業員との差別が著しいことは問題である。非正規も従 業員であることには変わりがないので、仮に契約切れでも中途解雇の場合でも、それが法律上正当であったとしても、事前に十分な予告期間をおいた上で、社宅 等での居住の一定期間の猶予や就職・生活相談など、一定の生活配慮をするだけの努力があってしかるべきである。単なる個別の離職と異なって、この種の一斉 大量離職というのは社会問題であることはいうまでもなく、平常CSRなど社会的責任の重視を掲げていた企業に対しては、一体何をやっているのかといいたく なる。幸い、問題が発生してからではあるが、ボランティアを先頭に緊急避難的な宿舎や食事の提供から、就職・生活相談や生活保護申請の緊急処理など、離職 者の救助に健闘しているといえる。

本来、労働者派遣法の改正や雇用保護条件の変化が明確になった時点で、このような緊急措置への対応策を準備すべきであったのに後手に回った。前回の不況 の際にすでにワークシェアリング問題も課題とされ、いくつかの試みもあった。隣で働いている非正規の仲間が窮地に陥るのを見て見ぬ振りしてきた労働組合も また、大いに反省の余地がある。

雇用の多様化や労働力流動化は労働市場の必然であり、制度も変わらざるを得ないが、その変化に対応したセーフティネットを即座に制度化するのは当たり前 のことで、これを抜かっていた企業・正規従業員労働組合は政府・公共団体ともども抜けていたといわれても仕方があるまい。(伴)


地球儀 の他の最新記事