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【2008年11/12月号】オバマ大統領出現に想う

オバマが大統領選に勝利した。何といっても、2年間の全米を巻き込む予備選から本選にいたるあの大統領選が圧巻であり、2時間の行列を苦にしない選挙 民の関心の高さに驚く。党首選が無投票の民主党、それに対抗して実施した党首選でしらけを克服できない与党、さらに無関心を装うマスコミ、というわが国の 現状と比べると、政治のポテンシャルの相違を痛感する。

当初、民主党内予備選で敗れたヒラリーへの支持票が本選でオバマ支持に回るかどうかが疑われ、世論調査でマッケインがオバマより優位にあった。が、金融 危機が勃発するや、ブッシュ政権の経済失政やこの金融危機対策の遅れなどで共和党批判が高まり、マッケインの立場も不利になり、TV討論などで最後まで マッケイン側の失地回復が及ばなかった。確かに、一面において、金融危機の勃発がオバマを勝利に導いたといえる。

しかし、考えてみると、若く未熟で黒人出自の新人オバマが、彗星の如く民主党大統領候補として脚光を浴びるにいたったのは、その演説の巧さ、というより はその哲学、「白人か、黒人か、ヒスパニックかが問題ではない。アメリカ社会は危機にある。今こそchangeが必要」とアメリカ社会の統合を強調した演 説が圧倒的な支持を得たことにある。実際には、彼の大統領就任後の実績をみなければわからないが、彼の演説のもつ意味はきわめて深く、アメリカ国民のみな らず、世界の各界の人々に感動と期待をもたらしたというべきであろう。

それは、冷戦体制解体という89年体制以降、世界に新たな時代の到来を予期させつつ、結果としてはアメリカの一極体制と同時に金融資本主義とグローバリ ズムの支配が強まり、9.11以降、それが極端化して、世界の不安化と金融危機を招き、その体制からの転換が求められているということである。この意味に おいて、冷戦体制とも異なり、かつ89年体制とも異なる、「新たな世界秩序=体制」への転換の始まりを示唆するものといってよい。市場万能主義や時価会計 万能主義や金融資本主義優位といった体制からの転換や多極主義・多元主義の重視などで、これは新たにつくり出すべき価値観である。

しかし、これをすぐに「大きな国家」「規制管理の重視」「公共投資・公共管理の重視」などというアンシァン・レジームとしてとらえる輩がおり、中には「社会主義への復帰」とまでいう軽率な評論家がいるが、間違いである。

何故、ソ連体制が崩壊したのか、サッチャリズムが有効であり、レーガノミックスが有効であったのか、を忘れてはならない。歴史は繰り返すように見えて、本質はそうではない。そこが分からなければ、未来を拓くことはできないのである。(伴)


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