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【2004年2月号】8年ぶりのソウルに想う―ノムヒョン体制の揺らぎ

年末に、韓国社会政策学会の総会に招かれて、「日本における高齢社会政策」について、基調講演のため、ソウルに4日間滞在した。着いて3日目はさすがに零下の寒さで凍えたが、8年ぶりの韓国訪問で、大きな変化を感じた。

着いた日の夕、学会長以下代表が招宴を催してくれて、小皿の民族料理を楽しんだが、韓国には「キムデジュン社会政策」という固有名詞があって、彼が大統 領に就任して以来、社会政策の改革に積極的に着手し、社会保障や労使関係法の改革のスピードアップを図って成果をあげていることがわかった。この学会のメ ンバーも大学人中心というよりも、どちらかというと政府関係や第3セクターのスタッフなどの研究者が多く、この学会の幹部も、キムデジュン大統領時代の社 会政策ブレインが中心といった感じであった。

ところで、韓国の現状について素直な感想を述べれば、ノムヒョン大統領は、三八六世代(30歳代・80年代学生世代・60年代生まれ)という民主派(主 に光州事件での活動家や学生運動リーダー)に担がれ、もともとやや反米的で北朝鮮にシンバシーを感じる世代の代表であったが、訪米してブッシュに会った時 には、「私はもともと親米だ」とお世辞をいって、結果的に「イラクへの3000人派兵」を承諾する結果となり、若い層からの支持が揺らぎ、「清潔」を売り 物に当選したにもかかわらず、側近による選挙資金疑惑が暴露されて批判が高まり、しかも、側近の官房に北朝鮮寄りがおり、この1月に入って、大統領の反米 政策に批判的な外交通商相を解任するなど、迷走の感が強い。

十数年ぶりに板門店に行ったが、昔のような緊張感はなく、川向こうに北朝鮮を見晴るかす巨大な展望台があり、すっかり観光地化していた。これも太陽政策 の故で開放的なことは悪くはないが、この展望台の中にはキムジョンイルの等身大のにこやかな写真や、小泉・キムジョンイルの握手する写真など、友好ムード たっぷりの展示があり、洋服・靴などをはじめ食品など、北朝鮮の物産や南北合弁製品などの展示即売所があるなど、その変化に驚かされた。民族統一への悲願 もわかるが、ここまでいくと北朝鮮への警戒心が解体したのではないかという危惧を感じたものである。(伴)


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