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「1990年代から2020年代の働きがいの変遷― 共同意識調査「ON・I・ON2」調査結果より―」 を読む

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こんにちは。シルバーウイークを目前に、新入社員の方は、そろそろ仕事にも慣れてきたころでしょうか。それとも、会社に慣れずに転職サイトを眺めているころでしょうか。


最近、会社でも「組織の人材定着が課題」「人手不足」などと言われますよね。一方で、「若い人はすぐに転職する」とも言われます。しかし、本当に転職志向は高まっているのでしょうか?

今回、『機関紙Int'lecowk』に掲載された論文から、「会社に勤め続けたい(会社勤続意志)」という意識を含む、働きがいの変遷について確認します。定年延長、中途採用の活発化など人々の働き方が大きく変わったこの30年、人々の ”会社に勤め続けたい” という意識はどう変わったのでしょうか。

【今回読む論文】

1990年代から2020年代の働きがいの変遷― 共同意識調査「ON・I・ON2」調査結果より―」 (坪井翔・阿部晋吾)『機関紙Int'lecowk』2024年8月号

本論文は、働きがいに関するさまざまな調査項目や、数年後の企業業績と関連があることが証明された「ワーク・モティベーションのプロセス分析」の30年間の変遷も取り上げています。

本文をお読みになる正会員の方は、専用ページからアクセスしてください。正会員以外で閲覧をご希望の場合は研究所までご連絡ください。

――この30年の働きがいの変遷

働きがいは、”仕事が楽しい” “仕事に生きがいを感じる” といった仕事自体によって生じる「内発的働きがい」のほか、労働条件などによって高まる「外発的働きがい」、さらに「内発的働きがい」「外発的働きがい」を含めた「総合的働きがい」から成り立っています(下図)。

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この「総合的働きがい」を表す項目の1つに「今の会社にずっと勤めたい(会社勤続意志)」があります。

 本論文では、国際経済労働研究所の蓄積データを用い、この30年間の「会社勤続意識」の変遷を確認しています。1990年代には「今の会社にずっと勤めたい」という回答は全体の約4割を占め、2010年代では5割以上にまで増加しました。しかし2020年代には約5割と、2000年代の水準に落ち着きました。

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――「若い人は仕事を辞めたがっている」は本当か?

 それでは若手の意識を確認しましょう。 

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「今の会社にずっと勤めたい」の男女の年代別に経年変化を確認すると、男女ともに 30 歳未満および「男性 30 代」の若年層で、2010年代の向上後、2020年代に低下する動きが顕著に見られました(上図)。この10年間に関しては、若手の「会社にずっと勤めたい」という意欲は低下していたものの、1990年代よりは向上していたといえます。Z世代に該当する、2020年データの30歳未満だけを見ても、「会社にずっと勤めたい」は回答者の3割以上を占めています。

ここ数年で若手の転職熱が高まっている印象があるので、この結果は意外です。2010年代の勤続意志向上の背景には、大震災やリーマンショックといった不安定な社会情勢もあるのではないでしょうか。

そのほか「今の仕事が楽しい」「生きがいを感じる」「今の仕事を続けたい」も1990年代と比較すると、2000年代以降に向上した働きがいは、同程度の水準を維持しており、この30年間で若年層の働きがいが高まっていたことが報告されています。

一方、女性40歳以上は、おおむね1990年代から一貫して働きがいが低下しているのが特徴的ですね。おそらく、昔は会社で働く中堅以上の女性は限られたエリート層であったのに対し、その後は女性の社会進出に伴い、よい意味で意識の多様化が生まれたのではないでしょうか。

まとめ

① 働きがいの全体的な傾向としては、「今の仕事が楽しい」「生きがいを感じる」「今の仕事を続けたい」では、1990年代と比較すると、2000年代に向上し、以降も同程度の水準を維持していました。一方、「今の会社にずっと勤めたい」は2010年代まで継続的に向上した後、2020年代には2000年代と同程度の水準に戻っていた、という推移を示しています。リーマンショックによる不況の影響で、勤続意志が高まったものの、2020年には2000年代の水準にまで戻ったと解釈できそうです。

 30歳未満および男性30代では、「今の会社にずっと勤めたい」は2020年に低下し、この10年で「会社にずっと勤めたい」という意欲は低下していえますが1990年と比べると依然として高い水準であり、30年間の推移としては、若年層の働きがいはむしろ向上していました。組合員意識調査のデータの推移を確認すると、「若手の離職志向が強くなっている」とは必ずしも言い切れないことが面白いですね。

この紹介でのポイント

・働きがい(仕事そのものへの充実感)は長期的に向上・維持。

・ただし「会社に勤め続けたい」という意識は近年低下傾向。

・若手の意欲は短期的には低下しているが、長期的には改善。

・一方で中高年層、とくに女性40歳以上の低下が目立つ。

労働組合は、自組織でも各年代別の特徴を踏まえ、「働きがいを支える運動」としての役割を果たしていくべきといえるでしょう。

景山千愛

  • 公益社団法人国際経済労働研究所元研究員(現アルバイト)
  • 学位:修士(京都大学)
    • 主要論文:景山・横田・花井・大北「HIV・AIDS報道における1992年の位置ー報道見出しの急増期に着目してー」」(『フォーラム現代社会学』第21号)、「研究公正に関する態度・価値尺度の改変可能性の検討 : HIT-Res(How I Think about Research)の分析をもとに」(『Studia humana et naturalia(教養教育紀要)』第54号)

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