研究所のご紹介(採用)

研究所の概要

「労働調査運動」を担う、日本でも数少ない公益のシンクタンク

職場で起こる様々な問題や社会が抱える問題。これらの解決には、経営や政治、専門家に“お任せ”するのではなく、自分たちの立場で知りたい情報を自ら調査・研究する機能が必要です。戦後まもなく誕生した私たち国際経済労働研究所は、この「労働調査運動」の機能を担う、国内でも数少ない公益のシンクタンクです。労働組合や研究者と共同で国内外の労働・経済・社会に関する調査・研究を行い、その成果は社会的な運動へとつながっています。

研究所の共同調査は戦後約50回を数えます。共同調査は、考え方や方向性に賛同する組織が同じ質問項目で行い、自組織の結果のほか参加組織全体の結果を共有し、活動に生かしています。この共同調査で得られるデータを蓄積し、これを用いて調査研究を行い、研究所の機関誌やウェブサイトのほか、学会でも発表しています。成果の一つとして、ワーク・モティベーション(働きがい)を正確に測り、企業業績との関連を検証しました。この技術は(株)応用社会心理学研究所も共有し、日本能率協会などに供与しており、全国の企業に展開されています。
共同調査をはじめとするこれまでの業績は こちら をご覧ください。

日本を代表する企業・労働組合の数百万人の従業員のデータが、実はこの国際経済労働研究所にあります。就活中の学生に人気の高い企業の従業員データも多く含まれています。一般的な調査会社やコンサルタント会社には、競合他社のデータが共存するということはありませんが、研究所には、企業の利益や競合に関係なく、例えばビール、大手流通など業種によってはライバル社すべてのデータがそろっています。これは、労働調査運動という他にない形態だからこそ実現できるのです。

私たちの調査研究は、このような多数の企業で働く従業員の働きがいや社会とのかかわりに役立っています。さらに個別企業のためだけでなく、得られた知見を公表し広く社会に貢献しています。

共同調査のほかにも、色々なアプローチで「労働調査運動」を展開しています。働く人たちが自ら情報を集め、本気で行動すれば、社会は変わるはずです。労働調査運動はまだまだ大きな可能性を秘めている、チャレンジしがいがあると思いませんか?

 

研究所のあゆみと今後の展望

国際経済労働研究所は、1948年に労働組合が共同で結成した「関西労動調査会議」を前身としています。設立の目的は、必要な調査・研究は自分たちで行うという、「労働調査運動」でした。この理念を受け継いで活動を続け、1948年以来もうすぐ70年を迎えようとしています。2012年には、組織改編後の労働調査研究所から数えて創立50周年を記念し、帝国ホテル大阪にて記念式典を行いました。

記念シンポジウムで提唱された「社会運動ユニオニズム」の考え方(自分たちのためだけに運動するのではなく、社会の他の様々な組織と連携しながら、社会のために運動を進めていく)は、今後の活動の重要な柱となっています。
50周年記念式典の様子は こちら

労働運動をはじめとする、社会的な運動に役立つ調査研究を行うシンクタンクとして、これからも歩みを進めていきます。

 

事業紹介

国際経済労働研究所では、「運動としての調査研究」を根幹に据えて、事業に取り組んでいます。こちら(業務内容)のページもご覧ください。ここでは、特徴的な共同調査および研究プロジェクトについて、ご紹介します(順次追加予定)。

★第30回共同調査ON・I・ON2

「組織への参加関与意識」と「働きがい」をテーマとする研究プロジェクト。1991年のスタート以来、その趣旨に賛同する多くの労働組合の参画を得て、2016年現在、日本の代表的な企業の労働組合を中心に360組織、24万人以上が参加する巨大プロジェクトに成長しています。さらに、経年で参加する組織も多く、規模は年々拡大しています。

これまでの調査研究から、労働組合への関与(自ら主体的に関わること)が会社の根を強くし、さらに、地域や社会の一員という自覚を持ち責任ある行動を果たしていくという社会関与への布石になるといった検証を経て、「関与」の重要性を改めて確信しつつ、次なるステージへと進化を続けています。このプロジェクトへの参加自体が、よりよい社会を作ることにつながっており、労働組合の再生にとどまらず、日本再生の第一歩を踏み出すことにもなると考えています。私たちは、このオルグ(=仲間を集めて、一緒にやろうと呼びかけること)を展開しています。

ON・I・ON2の詳細については、 こちら をご覧ください。

★第44回共同調査ON・I・ON3

「生きがい」「人生」をテーマとする、これから発信予定の研究プロジェクト。本プロジェクトでは、人の人生にはいくつかのパタンを抽出できるのではないかと考え、これを「ライフパタン」と呼び、年齢のほかライフステージ、キャリア発達、人格成熟などいくつかの時間軸を組み合わせて検討しています。調査の参加にあたっては、組織を通じての参加にとどまらず、将来的には一般市民が家族や個人としての参加も可能となるなど、社会と広く関わる形での展開を予定しています。まさに「労働調査運動」といえる取り組みで、ON・I・ON2以上の規模で実施する、他に類をみない巨大な研究プロジェクトです。

このプロジェクトでは、「個々人の幸福感や生きがい感の総和が、社会における『幸福』であり得るのか」という命題を掲げています。自分の直接的な利害関係だけではなく、「地域」「社会」、さらに現在だけでなく未来や歴史・社会的背景まで考慮することで、「全体最適」な社会が実現できるのではと考え、これを「球形モデル」と呼んでいます。現在、各領域への積極的関与とその全体のバランスについて、検討を進めています。

★第49回共同調査(企業制度・施策に関する組織調査)

企業制度や施策は、時代の情勢に応じて導入や改定がなされているものの、「制度・施策の導入や改定が、従業員の意識にどういった影響をもたらすのか」について客観的に検討された調査・研究は、実は日本のどこにも存在しません。そうであるならば、労働組合が共同で調査を行い、明らかにしようと企画された第49回共同調査では、所属組織における制度や施策などが、組合員の働きがいや生きがい、幸福感といった意識に与える影響を分析し、数値として定量的に把握することを目指しています。各組織の制度施策に関する共同調査を実施して、制度施策に関するデータベースを作成し、第30回共同調査ON・I・ON2により蓄積されてきた組合員の意識データと結び付けた分析を行います。本共同調査から得られる知見により、企業制度や施策の影響を検証することが可能となり、ひいては組合員の働きがいや生きがい、幸福感の向上に資することが期待されます。

★第50回共同調査(組合員政治意識総合調査)

研究所では、戦後継続して、主要な国政選挙の際に、組合員を対象とした政治意識総合調査を行ってきました。2016年7月の第24回参議院選挙後には、第50回共同調査として、政治意識総合調査を実施しました。これまでの調査からも、労働組合による、選挙直前の働きかけだけでは、組合推薦候補者への投票にはつながりにくいことが示唆されていました。今回調査では、「選挙を含む組合の政治活動には、日常の組合活動こそ重要である」というコンセプトを明確に打ち出し、投票行動や政治意識を詳細に分析するとともに、何が組合推薦候補者への投票につながるのかという観点から分析を行いました。第30回共同調査ON・I・ON2の知見も一部活用し、組合関与の高低が、組合推薦候補者への投票に影響することに加え、組合からの働きかけの納得感を左右することも確認されました。

日本の強み・弱み―その「仕分け」研究プロジェクト

日本をこのまま衰退させないために、各産業を代表する労働組合や研究者が参加し、日本の強み・弱みを一から検討し直し、今後のあるべき方向性についての政策的な提言を行うことをめざしています。キーワードの一つは、「産業間エンゲージメント」。自分の属する産業のことだけを考えるのではなく、各産業を支えるために他の産業がどのように関われる(エンゲージできる)のかという視点です。一般的には、「どうすれば自分たちが儲かるのか」という議論に終始しがちです。しかし、顧客や取引先となる互いの産業や消費者が支えなければ、共倒れになることは明らかです。

最も身近な例として流通産業を考えてみましょう。皆さんは、「安ければよい」という感覚で商品を買っていませんか?このような消費者が増えれば、流通や物流、メーカーなどは企業努力以上に負担を強いられることになります。公正な取引が行われない、人件費のカット、非正規化・・・その安さの“裏”で何が起こっているのか、考えてみたことはあるでしょうか。私たち消費者が「適正な価格で買う」「この企業・産業を支えるためにこのお店で買う」といった意識をもつことも、産業を支える一歩と言えるのです。

そのほか、世界シェアの大半を占める製品をもつ鉄鋼や化学、日本食という文化、アニメに代表されるコンテンツ、職人技ともいえる日本の郵便の仕組みなど、私たちが知り得なかった、そして多くの人がぜひ知っておくべき日本の強みや課題が明らかになり、どうすれば支えられるのかということを議論してきました。

さらに、この産業間エンゲージメントを具体的な運動として展開するにはどうすればよいのかを考えるための研究ワークショップを立ち上げ、運動のすそ野を広げる取り組みを継続しています。これも、労働調査運動だからこそ、可能なアプローチです。産業間エンゲージメントのウェブサイトは  こちら をご覧ください。