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【2022年7月号】ウクライナ情勢が生む世界的農林業危機について

これまで経験してこなかったことが突如起こり、そのような新しい事柄の流れを掴んで大儲けした有名人が、世間ではよく「陰謀を企む人」だとして軽蔑的に語られることが多い。新型コロナワクチンの大隆盛で確かに空前の大儲けをした一群の人たちはいる。

しかし、陰謀論を信じてはならない。世の中の新しい出来事の多くを陰謀論のせいにする風潮は私には疎ましい。

それでも陰謀論を言い募りたくなるような社会現象は確かにある。しかし、この点に立ち入っての言説はほとんどない。

確かに、世界中の研究者たちを集めて新しい事態の発生・進展の度合いを、世界の誰よりも速く掴める大著名人はいる。その著名人は、焦点を絞ることのできる特定のプロジェクトに対して、世界中の資金を集めることができるという金融手法を駆使できる。この著名人は、SNSはおろか、世界中のメディアを意のままに動かせて世論を誘導できるというカリスマ性も持っている。

そのうちの一人であるビル・ゲイツが、2022年6月半ばの”TechChurch Simposium, Climate 2022”の席上で派手派手しい彼ならではの発言をした。

彼は言った。NFT(非代替性トークン)への投資で大儲けした似而非投機者たちの目を見張る金儲けに人々の注目が集まっているが、この種の投機の社会的価値はゼロである。彼らは、雇用を生まず、社会を再生させず、ただ値が上がり続けるから転売を繰り返す「大馬鹿理論」 (The Greater Fool Theory) という空虚な思い込みに走る馬鹿者たちでしかない。

大事なことは、ウクライナ戦争が必ずもたらす世界的食料危機への対処に資金を集めて大規模投資をすることである。これが、ゲイツの発した大言壮語である。

ちなみに、ゲイツはすでに全米一の面積を所有する大農地所有者である。おそらくは種子の独占化を意図しているのであろう。私も農業危機は必ず起こると予測する。 しかし、対処法は、ゲイツと正反対に、小林業、小農地の知恵と新しいGAO(中央の指令なき資金融通)などの資金調達方法、そのための小さなSNS技術の開発にあると信じている。そのためにも新しい世代の若者の力に期待しよう。 本山 美彦(国際経済労働研究所・所長)  
 
 

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