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【2009年9月号】'09総選挙に思う―マニュフェスト選挙と政治のコスト―

本誌が刊 行されるのがちょうど投票日の当日頃で、総選挙の結果を確認できない告示前日に本稿を書きあげてしまわなければならないことは心苦しいが、今回は選挙結果 もほぼ見当がつくような事情があるので,敢えてこのテーマを選ぶことについて最初に読者に許しを請うておきたい。

さて、89年体制が成立して20年、世界の動向は世紀的な転換を迎え、さらにその間アジア経済パニック、アメリカ同時テロ、さらにリーマンショックとそ れを増幅する転換期を経過し、わが国政治は55年体制の終末を迎えながら、それらにほとんど対応することができなかった。確かに、多党化を反映する細川連 立政権の成立があったがきわめて短命に終わり、自民党をブッ壊すという劇場型小泉政権の5年間があったがそれを継続する新たな体制を生み出すよりも非継続 が問題を生み出し、新たな世紀の政治的パラダイムを見出せないまま漂流を続けてきた。今次総選挙によってようやく転換の契機にたどりついたかのようではあ るが、すべてはこれからである。

今回の総選挙はマニュフェスト選挙といわれ、国会解散後連日マスコミを通じて与野党のマニュフェスト論戦がたたかわされ、新しい動向として評価される一 面はあった。しかし、その内実は識者の論調でも見られるように、政策の中身の大半がバラマキといわれるモノ配り競争に終始し、政治体制の哲学・国家像とも いうべき改革の内実の提示に欠けていた。その結果、TVを通じて見られる各党の論戦は、本来今までの国会で争うべき内実が持ちこされたようなものであり、 しかも水かけ論的論議でウンザリするところがあった。通常わが国における国会論戦は、TV放映の機会が増えるほど、実のある議論よりも同じ議論を何人もが 重複して出演を競う傾向が多くなっている。マニュフェスト論戦がTVに映し出される度に、日常の国会論戦の不足を赤裸々に映し出す感があった。

政治献金問題にしても、政党助成金の意義がかき消える状況があり、臓器提供をめぐる法案は10年も審議を放置しておきながら、議会での論議不足を理由に 反対する怠慢議員を見るにつけ、わが国国会の質の低さと官僚依存の政権体質に浪費と政治哲学の貧困を感じざるを得ない。国会議員の定員削減と国会改革は政 治の緊要課題であり、これと官僚改革は一体のものというべきである。政策はもとより重要課題であるが、問題はそれを実行する政治体質である。新たな政治パ ラダイムこそが問われる。マニュフェスト選挙はこのことを国民の前にあらわにした成果がある。新議員と新政権はこれを国民の前に示すことが最大の課題であ ろう。(伴)


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