(公社)国際経済労働研究所 会長 板東 慧
中国の最近の動向について、様々な情報は流れるが、実際は中国がどこに向かおうとしているのか、何を目指しているのかはよくわからない。噂の域を出ない情報ばかりが流れていて、何が真実であるのかが明らかではない。そこで様々な憶測や余談がさまよっている感がある。
しかし、中国の動きが国際的に気になることは間違いない。それは、中国が外交上何を目指そうとしているかが鮮明でないことから来ているし、中国の実際の行動について自らが明らかにしていない要素が気にかかるからであるし、中国の国際的な動きに説明のつきにくい部分が多いからでもある。特にその大きな要素はインド洋・南シナ海から台湾周辺にかかわる中国の軍事的行動を含む動向である。中国自身は一応外部への説明的な表現はされているが、それと実際行動の差異が他国からすると納得できない「気になる」要素が多いということであろう。
中国の発言では「海のシルクロード」開発の一種のように扱われているが、実際はそうではなく、軍事的な実効支配が強化されている現実がある。ASEAN諸国も緊張を高めており、実際に次のような事態が進行しつつある。例えば、英国海軍クイーンエリザベスを中核とする空母打撃群が5月本国を出発し、7月中旬にインド洋に到着し、インド海軍などと共同訓練を実施し、その後南シナ海を航行した後、8月に台湾の南ルソン海峡を経て、フィリピン海に入る。他方、フィリピン海では、米・日・オーストラリア・仏・韓国・ニュージーランドが空・海軍の大規模合同演習を実施し、フランスは5月末にフリゲート艦を南シナ海に派遣し、年初に既に派遣している攻撃型原子力潜水艦と合同し、さらに仏空軍戦闘機・輸送機が同月内にオーストラリアからインド洋に至る空域で大規模な演習を実施した。また、ドイツは8月に230人を乗せたフリゲート艦「バイエルン」を独西部からインド太平洋地域に向かわせ、南シナ海に入る。英仏は、日米と共に中国の南シナ海に関する主張と活動を国連海洋法違反と指摘しており、警戒している。この問題は今後も引き続き重要課題となろう。
2021.8