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VOICES & VIEWS 寄稿1|KANSAIのクミジョに会いに行こう

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本誌では新しい連載として、労働組合におけるジェンダー平等をテーマとするインタビュー「VOICES&VIEWS-クミジョを超えて」を開始予定である。本連載では、インタビューを4名の研究者で行っていただくが、「労働組合のジェンダー平等は待ったなしである」という統一的視点をもち、性別を問わず誰もが排除されない組織のあり方を考えるという趣旨である。労組のジェンダー平等にとって、「クミジョ」の活躍を応援することは、これまでの男性中心の状況を打破する第一歩となると考えられるが、「クミジョ」にあたる人たちだけでなく労働界、ひいては社会全体に寄与する連載にしていくことができればと考えている。

また、インタビューでは、労働組合で活躍される女性(クミジョ)をはじめ、「クミジョ」ではない方、労働組合役員以外(たとえば研究者など)などにも広くお話をうかがう予定である。できる限り、これまでに他のメディア等で紹介されていない方々にも光をあてたいと考えており、関西圏が多くなる可能性があるが、関西圏に限るというわけではない。

このページでは、連載の開始に先立ち、4名の研究者の方々および弊所にて2024年より本格的に研究を行っているダイバーシティ・アクト研究チームより、関心や問題意識についていただいた寄稿のうち、本田一成氏の記事を掲載する。

CONTRIBUTOR

本田 一成

武庫川女子大学経営学部 教授・クミジョプロデューサー


1. はじめに

クミジョ(労働界の女性、狭義には女性役員、男性はクミダン)を対象にしたインタビューに基づく新連載企画の依頼があった。今後、企画が動きだし、読者の目に触れることになろう。最終的な企画内容や実施においては、発行主体である国際経済労働研究所や、連載を担う他のメンバーとの調整が入るし、修正や変更がありうる。しかし、発案者としてどのようなことを企図しているのかを記すのは無駄ではないと思われる。


筆者が名乗るクミジョプロデューサーの仕事は案外に広がりがある。単独もしくは共同で実施する量的、質的なリサーチや、報告書、白書などの取りまとめ、学会発表、講演、執筆、座談会、対談などの活動の他、労組役員とのミーティング、相談や依頼に対する応答や助言などである。K2P2(クミジョ・クミダン パートナーシッププロジェクト)の活動も同様で多種多様である(本田 2026)。


それらの全ての活動をクミジョの増強やクミダンとのパートナーシップづくりへどうつなぐかに心を砕いている。春闘や選挙など華々しい労組の対外活動ではなく、内部組織に立ち入ることになる。労組という目に見えない総体、主体をうんぬんするのではなく、1 人ひとりの人間の顔を見ながらの仕事である。クミジョをプロデュースする体で、労組をプロデュースしていると言えば、言い過ぎかもしれない(本田2025b)。


反対に、労働界の外側から、アウトサイダーの立場だからこそ見えること、知り得たことなどをひたすら労組へ伝えるだけのメッセンジャーというのも控え目過ぎる(本田 2025a、K2P2 2025、同 2026))。その間を揺れ動きながら、さて、新連載をどのように位置付けたらよいのであろうか。

2. 段階論的な問題意識

筆者がクミジョ・クミダン研究と活動に着手した 2020年にさかのぼり(それ以前のヤミ研の時期は除外)、これまでの問題意識の柱を跡付けることは、新連載企画の問題意識を理解する一助になるかもしれない。


開始した当初はクミジョにまつわる状況や矛盾点の構造把握、それらの背景や土台を考えた「謎解き」の時期であった。続いて、果たしてクミジョの増強は労組の価値を高めるプレミアムと考えるか、それとも、それは無用の長物であり価値を下げるペナルティと考えるかの「Pvs P」の時期に移った。さらに、約 5 年を費やしたから、いったん線を引いて知見の回答を出す「チェックアウト」の時期に到達した。現在、そこから「空想」の時期に入ったところである。


「空想」とはフューチャーデザインと言いかえてもよいが、クミジョ・クミダン問題のある労働界の現在地と、労働組合の将来の理想像(現実離れ)を対置させることである。理想像とは何か。そこに到達するマイルストーンはどこにあるのか。どんな組織能力、どんな人材、環境や条件ならそれが可能かを想像するのである。再び現在地を見たらどうなのか。「謎解き」「Pvs P」「チェックアウト」も見直すことになる。


クミジョ・クミダン研究の階段を上ってきた先で「空想」を考えるヒントが欲しい。これが新連載の問題意識である。ヒントは自然に湧いてくるものだろうか。また、クミジョから得た方がよいか、それともクミダンからか。その答えは自明ではない。

3. クミジョが語るということ

労組の命運と理想像を混合させた空想に進むためにクミジョのオピニオンリーダーとしての優位性に頼むとすれば、何を聞き取ればよいのであろうか。少なくとも、理想像に関して話し手に委ねるだけでなく聞き手が考えておくことが必須である。まず聞いてもらえなければ聞けない、という原則も軽視すべきではない(東畑 2022)。


例えば、「男女共同参画社会基本法」の一部改正により、全国に設置されている男女共同参画センターの機能強化と地域連携の結果、労組と緊密な関係形成が進み、相互のノウハウやリソースの貸借や協業が始まるとか(本田 2026)。「支払った組合費で何してくれんねん」と言われてしまう組合費と組合員便益の取引関係のグッズ・ドミナント・ロジック(GDL)は消失して、組合員自らが主体的にサービスや運営に関与するサービス・ドミナント・ロジック(SDL)による労組の共創へ脱皮しているとか(ラッシュ = バーゴ 2016)。


いかなる理想像も聞き手に委ねられるところがあるが、それでは何をどのように聞くのか。一般的にクミジョが語ることを聞き取る企画や対談の実例をいくつか調べてみた。会話のやりとりでは、所属する組織やその活動の紹介、ジェンダー平等に対する経験や振り返り、総合した知見や展望があり、うまくまとまっていると思う。


あえてまとまりすぎているとしたらそれはなぜ、と考えてみると、指摘すべき点はいくつかある。


第1に、聞き手が問う分量に差がある。話し手の分量が多いほど話し手に委ねることになり、聞き手がまとめないのにまとまりや座りがよい。


第2に、多かれ少なかれ、話し手は所属する組織の活動を語る。意図的に、あるいは結果として、話し手にその組織を背負わせている。


第3に、クミジョが語っているのに、労組がクミジョを語っているかのように見える。クミジョは労組のことは語るが、自身の意見を案外に語っていない。


第4に、労組やクミジョの地域性をあまり感じられない。登場するのは、大都市、特に東京で活躍するクミジョが多く、地元感がない点で違和感を覚える。


第5に、なるほど、と思える点が多くて勉強になるが、それがどれほど一般的かは不明で、業界の財産となるかは不確かである。


第6に、たくさんのクミジョが登場するのに、人脈や関係性の情報がほとんどない。クミジョのネットワークづくりのアイデアやヒントが生まれない。

これらは、もちろん傾向であり、同時に、ないものねだりである。だが、クミダン流の作法のような気がする。見えなかったものを見たい気持ちになってくる。その気持ちが読者を代弁するものかどうかは定かではない。

4. 新連載企画の特色

以上、あれこれと考えてきて、新企画の特色を出すとすればどうなるか。あえて企画の腹案として一部を示してみよう。

タイトル(案):
「VOICES & VIEWS -クミジョ、その先へ。」


企画概要:
労働界で多様性が尊重される中、クミジョにオピニオンリーダーの立場を担ってもらい、ジェンダー平等活動の視点を入れた労働組合の分析や展望を語ってもらうことで、労組の今後の発展に資する。


想定読者:
(1)クミジョ及びクミジョ候補者
(2)男女平等参画、ジェンダー平等推進担当者
(3)クミジョの動向に関心のあるクミダン


話し手:
関西圏の労組で活躍するクミジョ
(現役・OG)、クミダン


聞き手:新連載メンバー


トピックス(主に聞く項目):後述1


その他(意見収集、貢献点など):後述2

1のトピックスは、大要次のように考えている(現時点で未定)。
・略歴、活動歴
・労働界での人脈(先輩後輩、師弟、交流・交遊関係、労働界以外など)
・現在の主な仕事内容・状況、取り組み、経過と方向性
・男女平等参画・ジェンダー平等推進への関わり、立場、活動内容
・将来の労組像、理想、野望、夢など(所属組織ではなく労働界についての個人的見解)
・その時の将来の日本の像
・将来の労組像を実現するための内容、方法、条件など(所属組織ではなく労働界についての個人的見解)
・労組の改善すべき作法、慣行など(所属組織ではなく労働界についての個人的見解)
・今後のキャリアの意向、目標、希望、可能性など
・現在のクミジョ交流に関する分析、意見
・会うべきクミジョの紹介、理由
・上記およびそれ以外に関する意見交換

2のその他とはさしあたり、まず新連載の読後の感想や意見などを集めることである。
それらを踏まえてクミジョの意見から労働界で共有すべき意見へと抽象度を高めるこ
とを目指す。新連載メンバーとのディスカッションは必須であろう。また、クミジョが新連載で共有できた点を他のクミジョと一緒に考える学習会、集会、シンポジウムなどを開催するのも一案である。


もう1つは、そうした共有の延長線上で、新連載をきっかけにしたクミジョのつながりをつくることである。「The KANSAIクミジョ名鑑」を制作するとか。それに基づき、クミジョが局所的に、あるいは広く交流する機会をつくることはマイノリティから脱する気概を示す一手かもしれない。例えば、2030 年までに関西圏のクミジョ 500 人(現役・OG)で大忘年会(もしくは大新年会)を大阪のホテルで開催する(名付けて「The KANSAI クミジョ大忘年会2030500(ニーゼロサンゼロゴーゼロゼロ)」)。

5. おわりに

クミジョプロデューサーの立場から、企画書を説明する体裁で、問題関心の一端を述べてきた。そこから示唆される新連載企画の内容は、解釈の違いや混同、聞き手と書き手をこなす都合や思惑などに関わる(古賀 2021)。さらには労組と交流してきた経験や信条、ポジショナリティなどの影響を受けるのは否めない。だから、思う通りにうまく行くとは限らない。


芯のところをごく簡単に言うと、クミジョの現在もしくは過去から未来への自分事としてのストーリーを自身の言葉で語ってもらうことに尽きるのかもしれない。そんなことを聞かれたことはない、とクミジョに言われるかもしれない。だが、それならなおさら聞きたい。


それをみんなが聞きたいし、それを聞いたみんなが語りたい、となれば、少なくとも心理的には、みんながつながれる場を提供することになる。そのみんなとはクミジョだけなのか、クミダンも入るのかと言われそうだ。だが、あらかじめ決めるものではないであろう。労組の皆さんの誰もが、働きがいがあり、働きやすく、安心安全な職場が欲しいことを忘れるべきはない。


――文献――

K2P2(2025)『K2P2白書 2024年度版』j.union株式会社
K2P2(2026)『K2P2白書 2025年度版』j.union株式会社
古賀史健(2021)『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』ダイヤモンド社
東畑開人(2022)『聞く技術 聞いてもらう技術』ちくま新書
本田一成(2025a)「クミジョファイル(1)~(6)」『Rengo Online』(2025.4.20 ~ 2025.9.20)
本田一成(2025b)『クミジョを考える』信山社

本田一成(2026a)「クミジョ・クミダン パートナーシップ プロジェクト(K2P2)とは何か」『労働法律旬報』第 2095+2096号
本田一成(2026b)「自治体と労働組合のジェンダー平等推進の連携と協働男女共同参画社会の形成と労働組合活動の近接に関するノー
ト」『武庫川女子大学研究成果の社会還元促進に関する発表会(第10回)資料集』
本田一成(2026c)『クミジョトーク』井上企画出版、近刊
ロバート・F・ラッシュ、スティーブン・L・バーゴ、井上崇、庄司真人、田口尚史訳(2016)『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』同文館出版

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