働きがい研究プロジェクト

組合員の働きがい向上に取り組んでいる方 働きがいというテーマに関心のある方
  • 労働組合における働きがい向上の取り組みは、果たして正しく行われているのでしょうか?
  • 国際経済労働研究所は組合員総合意識調査「ON・I・ON2」を通して、労働組合が組合員の働きがい向上に対してとるべき姿勢やアプローチ方法を発信し続けています。
  • 国際経済労働研究所では、組合員総合意識調査「ON・I・ON2」の一環として、社会心理学の知見に基づいて働きがい意識を調査しています。
  • およそ20年にわたる経年の蓄積データから意識構造の研究や様々な改善提案を行っています。

その「働きがい」向上活動、間違っていませんか?

現在、多くの労働組合で「働きがいの向上」や「働きがいの改善」がビジョンに掲げられています。しかし、その中身といえば、仕事を取り巻く環境の整備に主眼が置かれていることがほとんどです。ここに、よくある労働組合の取り組み例をとりあげると・・・

ある労働組合の取り組み例
  • ★スローガン働きがいのある職場や会社を目指して!
  • ★具体的活動: 労働条件の改善、働きぶりの公正な評価チェック、
    組合員の不満・苦情の処理、雇用契約や条件のチェック
  • ★成 果: 組合員の不安や不満の解消、安心して働ける職場の実現
  • ・・・etc

ところが、このように仕事を取り巻く職場の環境や働くための条件をいくら整えても、組合員の「働きがい」の向上には直結しません。
なぜなら、第一に上記のような条件整備(=働きやすさの充実)に使える原資は有限であり、それが枯渇してしまうと仕事への関心を維持できなくなるからです。
第二に、本当の意味で働きがいを向上させるには、「働きやすさ」だけではなく、労働そのものへ、つまり「働きがい」に直結したアプローチをする必要があるからです。

働きがい向上のための様々な活動

学術的な視点から、「労働そのもの」にアプローチ

国際経済労働研究所では、社会心理学の観点から、「働きがい」をワーク・モティベーション(仕事に対する動機づけ)と定義し、取り扱っています。モティベーションに関する知見からは、労働そのものの楽しさ・興味が働きがいを高めることが示されているからです。

仕事に対するモティベーションは、外から与えられる報酬(または罰)だけではなく、楽しさや面白さ、興味といった心の内から沸き起こる動機によっても呼び起こされることが、学術的に古くから理論化されています(*1)。
確かに、仕事を取り巻く環境や条件といった外的報酬も、働きがいを高める一要素ではあります。しかし働きがいへの直接的な影響は低く、また一時的な効果しか得られません。むしろ働きがいを高めるためには、働くことに対する楽しさや面白さ、興味といった労働そのものから得られる内からのやる気にアプローチしなければ意味がないのです。

組織課題は、調査を通して改善できる

働きがい、つまり仕事に対するモティベーションは、客観的な指標をとることによって“見える化”できます。質問紙調査によって働く人の意識をチェックすることにより、組織の課題を浮き彫りにし、的確な対策を講じることができるのです。

国際経済労働研究所では、組合員総合意識調査「ON・I・ON2」の一環として働きがいに関する共同調査を行っており、現在ではその参加組織が約300組織、200万人という規模にまで達しました。このような豊富なデータの蓄積を活かし、他労組のデータと比較することで、組合員の働きがいを正確に把握することができます。

そもそもON・I・ON2調査は組合員の意識実態を測るためだけではなく、主体的に活動を担う「仲間」を増やすための調査です。意識調査は回答者に対するメッセージという性質をもつため、たとえば単に満足を尋ねるだけでは、調査自体が「執行部は皆さんに満足を提供しようとしているのですよ」というメッセージを組合員に投げかけることになります。これではますます不満解消を執行部に求めるだけの受け身の組合員を増やしてしまう危険性があり、調査内容には慎重な姿勢が必要です。

研究所では上記のような問題意識をもって「働きがい」を調査・研究しており、積み重ねた成果に基づいて組合員の働きがいを高めるための提案を行っています。なお、各労働組合での働きがいの向上は、経年調査によって確認することができます。

※共同研究機関である株式会社応用社会心理学研究所(Aspect)では、従業員の意欲を引き出しパフォーマンスに結びつけるための、企業組織を対象としたワーク・モティベーション測定・調査を行っています。

一人ひとりが自ら参加関与する社会の実現を・・・!

ON・I・ON2は組合員一人ひとりの「志」を起点としています。「自分のいる職場や会社、ひいては社会全体の問題解決を他人任せにしない」という強い意志なくしては、何も変えることはできません。

この考えは、組合員の「働きがい」の向上や改善にもあてはまります。働く人が自発的に課題や組織に参加関与し、働きがいのある職場や会社、社会を創造していく。これこそが、今後の労働組合の目指すべき方向性であり、働く人(社会人である一個人)のあるべき姿ではないでしょうか。