本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

1-2 こうしてお客様はつくり出された

 労働組合は多様化する組合員のニーズに合わせて徐々に活動の幅を広げていくうち に、組合がどうあるべきかというユニオン・アイデンティティ(UI)を拡散させて しまいました。バブル経済真っ盛りの頃には、広告代理店や経営コンサルタントが介 入して、組織の名称をカタカナにしたり、旗の色を変えたりするなど、表面的ともい えるUIの見直しを盛んに行いました。その一環として行ったのが、「組合員の声を集 めて、活動に反映させる」ための組合員意識調査だったのです。我々がON・I・O N研究会で議論したのは、この調査票でした。調べてみると、あたかも

「顧客満足度 調査」のような組合員意識調査があちこちで行われていました。
 国際経済労働研究所では「社会構成主義(現実はみんながつくり出す)」という立場 に立っています。社会構成主義的に考えれば、調査はそれ自体がメッセージ。調査に 対するスタンス、調査票から受け取るメッセージが回答者の間にリアリティをつくっ てしまうのです。「お客様、どのようにさせていただいたらよろしいですか」というメ ッセージがあふれる調査票を配ったことが、「執行部がやってくれるのなら、やったら。 自分は手伝わないけど」という無責任な態度で回答された結果をもとに活動を構築す ることにつながってしまいました。「このままでは早晩、労働組合は組合員の御用聞き になっていくだろう」という危惧は、残念ながら的中したのです。
 


理論編 の他の最新記事