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1-1 組合員は無関心なお客様

周りの組合員をご覧になって感じませんか。
「組合」といえば「執行部」のことを指し、自分たちのことだとは思っていない。
文句を言うだけ、もしくは困った時に助けを求めるだけで、普段は自分から手伝うことはなく、決して椅子から立ち上がらない姿―。

ON・I・ON2調査のデータからも、シビアな現実が垣間見られます。
労働組合に対する意識をみる設問に対し、「どちらともいえない」という回答の多さが目を引きます。
ほとんどの設問で、肯定的、もしくは否定的な姿勢を示すわけではなく、「どちらともいえない」と曖昧に答える組合員が最も多数を占めているのです。このことは、組合への無関心の現れと考えられます。そんな中、例外的に、「労働組合は社会的に欠かすことのできない存在である」と答えた組合員は69.4%、「役員になって組合活動を担いたくない」という回答は53.8%と、YES-NOが明確です。これらの回答結果が意味するところは、建前と本音のギャップ、固定概念と現実の落差という見方もできますが、おおかたの組合員は「組合は社会にとっては必要なものかもしれないが、自分が関わるものではない」と考えていることを裏づけています。

「経営に対して発言力がない」「組合活動が活発でない」という設問に対して「そう思う」と批判しておきながら、一方で「あなたは組合活動に積極的に参加しますか」に対しては「いいえ」、「いざとなったら組合役員になって活動を担いますか」に対しても「いいえ」。「活発でない」のは“自分自身”が参加していないから、「経営に発言力がない」のは“自分自身”が支えていないからに他なりません。
本来、組合費はカンパであり、組合員は高い組合費を払う代わりに執行部からサービスを受けるお客様ではなかったはず。組合役員は「職場の代表として会社に組合員の意見を伝えて下さい」と送り出される人物であるはずなのに、組合員が誰も後ろ盾になっていないのなら、執行部はハシゴを外されたようなものです。

しかし、事は組合員だけの問題ではありません。舵取り役の歴代の執行部が、目指すべき港が決まらないまま、羅針盤も持たずに、巨大船の向かうに任せて航海を続けてきたことも、また事実です。
20年前、ON・I・ON2がスタートした頃、とうの昔に労働組合は求心力を失っていました。労働者の生活水準は既に向上し、労働者の理想といわれた共産主義も崩壊しました。
戦後間もない結成当初、「夕陽=理想」を目指して全力疾走していた“志”は高度経済成長により物質的に豊かになる中で忘れ去られ、目指すべき「夕陽」が沈んでしまっている状態でした。
巨大な心理的慣性力によって転がり続けてきた労働組合は、誰も押す人がいなくても、すぐには止まりません。しかし、実体としては「運動」から「制度」に姿を変え、冒頭で述べたように、組合員は誰も関わりたくない、組合役員もなりたくてなったわけではないという状況に陥ってしまったのです。

 


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