国際経済研究事業部
業務内容

本研究事業部では、世界の労働者の働きがい向上と日系企業の発展双方に貢献するために、海外に展開する企業を対象に、「第42回共同調査 海外ワークモティベーション調査」を手掛けています。2005年に、マレーシアを皮切りに開始された同調査は、その後、シンガポール、タイ、インドネシア、中国、ベトナムへと対象を広げてきました。2006年にはマレーシアの首都・クアラルンプールに、また、2010年には、中国の商都・上海に、駐在員事務所を設立しています。さらに、調査を通じて得た知見は、現地での経営者会合での講演や、現地の日本語新聞に執筆するコラムなど通じて、広く発信を続けています。今後も、現地のニーズを的確に掴み、活動の充実化に努めていきたいと思います。
また、国内では、大きな選挙のたびに「組合員政治意識調査」を行い、労働組合員の政治や組合に対する意識の分析と、活性化に向けた提言を行っています。その他、国際経済や労働経済、福祉システム、都市活性化、住宅環境、地球環境、地域通貨などについて広く研究を行っています。そのひとつが、「日本型企業統治」の研究です。これは、アメリカ型とも旧来の日本型とも異なる、新しい「日本型」の企業のあり方を考えてみようという取り組みです。2002年には、公開セミナー「『日本型企業統治』の発見をめざして」を開催し、多くの方々の参加を得ました。研究成果は、本山美彦著『ESOP:株価資本主義の克服』(シュプリンガー・フェアラーク東京、2003年)にまとめられています。

共同調査としてのDURIANとPANDA

海外の現地法人は、日本本社には無い苦労を多く強いられています。なぜならば、日本本社の経営手法を半ば取り入れながら、現地企業や外国籍企業がひしめき合うアウェーの環境の中で、「共通性」と「相違性」の間のどこに落とし所を見出すかという難しさと日々闘っているからです。そのため、「海外」で「ワークモティベーション」を考え、役立てるためには、心理学、経営学だけでなく、その土地のこと、さらに、(現地を相対的に理解するツールとして、)日本のこともよく知っておくことが必要です。こうした分野で貢献できるのは、長年の経験と知見を有する、我々、国際経済労働研究所を置いてほかに無いと自負しています。
ところで、上述の「海外ワークモティベーション調査」は、東南アジアでは「DURIAN」、中国では「PANDA」の略称を用いています。DURIANは、Domain for Understanding and Recognition of Intra-Asian Network、PANDAは、Psychology and Asiaの意味です。「アジア間に見られる『共通性』と『相違性』を踏まえながら、現地の人々の意識を理解し、経営に役立てていこう」という意味が込められています。「DURIAN」、「PANDA」は、現地経営に悩み、努力する多くの経営者から好評を得ています。