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【2019年9月号】拡大する景気後退――ドイツ・欧州の動向

 日本経済新聞の去る8月15日朝刊に以下の記事が出ていた。

―ドイツ連邦銀行(中央銀行)が8月20日朝刊に公表した月報によれば、ドイツ経済は今年7~9月期に2・四半期連続のマイナス成長となったことが明らかとなり、景気後退に陥る恐れがあることを警告した。これについてワイトマン総裁は現状について景気の“停滞”を指摘、国内経済は引き続き堅調だが、世界的な貿易紛争や英国のEU離脱が輸出と生産を落ち込ませていると分析している。ドイツの4~6月の実質成長率(速報値)が前期比マイナス0.1%で、3期ぶりのマイナス成長となり、月報では「ドイツの景気は19年夏もさえない見通し」といわれ、再び「軽度の後退」に見舞われる可能性があり、2・四半期連続のマイナス成長となれば、定義上、景気後退とされる。ドイツ連銀が明らかにしたのは、「欧州経済の牽引役だったドイツ経済の落ち込みが偶発的なものではなく、弱い状態が当面続きうるという深刻な現実である。輸出・生産の低迷が続けば、現在は堅調な国内の消費や投資にも悪影響が広がることは避けられない。欧州経済全体の重荷にもなる。欧州中央銀行(ECB)はドイツを中心とした欧州経済全体を下支えするため、9月に追加の金融緩和に踏み切る構えだ。マイナス金利の深掘りや18年末で打ち切ったばかりの量的緩和政策の再開が検討されているが、すでに金利は下がりきっており、効果は限定的との見方もある。  

ドイツ国内外では、独政府による財政出動への期待がにわかに高まっている。欧州全体ではなく個別の国の景気の落ち込みに対応するには金融政策よりも財政政策がふさわしいとの指摘がECB内にある。財政均衡を重視したきメルケル政権が方針転換に踏み切るかが最大の焦点だ―  

以上の情報は言うまでもなく、共に、前号のこの欄で紹介した中国経済の景気後退を合わせてアジア経済の減退、欧州経済の減退という関連を総合すると、世界経済の減退が差し迫っており、いずれも単なる景気対策に止まらず大幅な財政出動が不可避となっていることは言うまでもないであろう。  

本格的な世界の景気後退が迫っており、それが一時的な景気調整の範囲に収まりきらない構造を持つことが推察される。それは言うまでもなく、今日に至る景気の展開が、AIを中心とする新技術開発と導入による新しい景気の波の中での循環性を持つ構造的な景気変動の結果だからである。もとより、それは未だ続く技術革新の過程における景気変動であり、従来と異なった構造的な深さと幅を持つものであり、今後の経済構想像の転換を内在するものだけに、従来型の景気対策で済むものではない。長期スパンの新技術開発とその適用を巡る新たな経済変動として捉えなければならないであろうし、その深さと幅について新たな視点から対応すべきものと言えよう。                                                (会長・板東 慧)


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