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【2019年4月号】混迷する中国の基本的立地

去る3月、中国は恒例の全国人民代表大会(全人代) を開催した。通常10日間程度で、目立った議論もなく、 法案や方針が承認されるため、「ゴム印会議」とも呼 ばれる。今年は3日にまず国政助言機関・全国政治 協商会議の開幕式を人民大会堂で開き、開始から40 分で小さなどよめきが起きたそうである。それは、ひな壇 に座る米中貿易交渉の責任者・劉鶴副首相の動きが 目を引いたからのようだ。すなわち、劉氏が回したメモ が4つ先の席の李克強首相にわたったが、李氏はこ れを眺めてうなずき、たたんでポケットに入れ、隣の習 近平国家主席には見せなかったようで、このことがマ スコミの注目になって、李氏と習氏の関係についての 違和感を推定する向きもあった。もとよりこの程度の問 題がどれほど大きな問題なのか、世界のマスコミが注 目するのである。  

さて、いま中国の政治指導をめぐっては世界が注目 する動向がある。それは、中国が体制をかけてどう向か おうとしているのか、それを巡って指導者間に相当な 意見の差異があり、何を選択するのかということ自体 がその成功の可能性を含めて幹部間の重要課題と なっているからである。  

少し長くなるが、1949年、中国は共産党指導の下 に独立を達成し、体制としては社会主義に向かうが、 そのために必要な資本主義体制の蓄積がないことから 「新民主主義体制」と規定して建国をすすめてきた。 この過渡期の規定は中国内部で指導者間の様々な 見解の相違を表現することにはなったが、その間中国 は高成長し、今世紀に入って「市場経済」を導入し、 米国に次ぐ「世界第2の経済」国家となった。経済は 大幅に好転して国民生活も豊かになったが、やはり社 会主義に向かうという規制は維持されるし、それらを巡 る問題点もある。  

同時に、中国は国有企業を政府の指導下におい て、これをてこにして公共投資や景気操作をしてきた が、その意味で「国家資本主義」という体制規定をて こに社会主義への移行を試みるという体制観による 矛盾もあり、高度成長から急速に失速してきた国民経 済を巡る問題点として注目される。

(会長・板東 慧)


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