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【2019年2月号】センター試験をめぐって

今年も大学センター試験の時期が来た。このような制度が 始まってすでに60年以上を経た。そのため、今日では誰も改 めて検討すべき課題とは思わなくなったが、果たしてこのま までよいのか疑ってみる必要がある。

このような制度が始まったのは上記の通り1950年頃から で、まさしく筆者の大学受験の時期であった。それまでは各 大学・学部ごとに入試が実施されていたのだが、欧州など と同じように大学入試について全国で共通の制度で同時 に実施すべきでないか、という考えが当時の大学や文部省 の間で言われるようになって「共通一次試験」を国家として 実施しようということになった。欧州ではスイスにそのセンター があるが、そこに加盟する国では大学入試について共通の 制度で実施している。一般に「バカロレア」という制度であ る。わが国ではフランスの事例がよく紹介されているが、いわ ば「高等学校卒業資格試験」あるいは「大学入学資格試 験」とでもいうものである。細かい仕組みはそれぞれ異なるだ ろうが、要するに大学入試資格を国家検定で全国一律に 決めようとするものだ。わが国の場合もそのような改革を行 おうとしたもので、これを「共通一次試験」として実施し始め たのである。しかしそれが「資格試験」とはならず、個別の大 学・学部の入試は別個に実施して、共通一次試験は個別 大学入試の結果に対する参考成績として活用するというシ ステムが一般化されてきた。その参考として活用するやり方 は各大学・学部が決めることになる。当然、どの程度の参考 にするかはそれぞれ異なる。現実には個別大学・学部での 試験結果に対する参考要素として利用されることになり、そ の結果「共通一次」という呼称も様々に変遷して「センター 試験」などといわれ、大学入試としてのかかわり方が外部化 する傾向を強めたし、「バカロレア」などという性格からは次 第に遠のく傾向にあるといえる。

筆者は、「バカロレア」=大学入学資格試験としての性格 が維持され、さらに強化されることが重要と思うところである。

(会長・板東 慧)


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