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【2017年4月号】欧州で伸長する極右政党とEUの揺らぎ

オランダ・フランス・ドイツなどでナショナリズムの風潮が強ま り、ハンガリー・ポーランドなど中東欧でも自国最優先のポピュ リズム政権が生まれている。

オランダの社会文化局の世論調査で「オランダは間違っ た方向に進んでいる」とする意見が53%を占めたことが注目 され、与党の中道右派―自由民主党支持率17%に対して 極右の自由党支持率が16%という僅差の状況で、先日実施 された国政選挙でかろうじて与党がその地位を保ったとい う実情がある。フランスでも間もなく大統領選挙が実施される が、やはり極右の候補ルペン氏が最も有力とみられている。 いずれも、従来の中道左派あるいは中道右派政権が経済 成長の鈍化によって切り詰めた社会保障や福祉政策に対 しての不満が背景にあるとみられるが、米国のトランプ大統 領の米国第一主義のスローガンによる勝利の影響もあるとみ られる。

いわば成長鈍化による現政権不満が、難民問題など移 民増大への不満と重なってグローバリズムと福祉国家への 批判となり、それがナショナリズムとポピュリズムを呼び覚ます 結果となり、さらにこれがまさしく既に見た英国のEU脱退と 重なり合う現象といえる。そしておそれに便乗する右傾化ポ ピュリズムの蔓延というのが新たな潮流といえるだろう。EU はその成立までに第2次大戦直後からの長期にわたる準備 期間を経て様々な可能性の中から選択したモデルではあっ たが、市場と通貨を制御する機能のみという限界からギリシ アの財政危機を契機とした危機を迎えたのであった。その意 味でこれが再構築の機会となって新たな試みが軸となって 再挑戦が始まるであろうし、他のブロックでの試みも進むこと が期待される。(会長・板東 慧)


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