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客観的な職務内容の違いや報酬構造の違いによって,内発的動機づけと外発的動機づけの顕現性に差異が見られるか?

2)職務内容や報酬構造の差異による,内発的動機づけと外発的動機づけ過程の顕現性

外的事象モデル:パスダイアグラム

仕事場面で考えた場合,内発的動機づけのプロセスには,外的事象(給与の満足度や職場の人間関係など)からの影響が大きいことはいうまでもない。

そこで,"給与の満足度"という外発的動機づけのプロセスが仕事の楽しさに影響を及ぼすことを考え,左図のような外的事象モデルを構築した。

この外的事象モデルの信頼性・妥当性を検討するために,業種・業態の異なる7企業を対象に同様のモデルを適用した。その結果,モデルは支持され、各企業において外的事象を含めた内発的動機づけプロセスが適用可能であることが確認された。モデルの妥当性が確認できたので,同企業内で,職務内容が異なり,また,報酬構造にも違いがある2職種について,この内発的動機づけプロセスを適用し比較を行った。

内発的動機づけ研究における報酬構造の種類

◎課題随伴報酬(task contingent reward)

課題する事自体に与えられる,あるいは課題を完成したことに対して与えられる報酬。例えば,基本給

◎遂行随伴報酬(performance contingent reward)

ある特定のパフォーマンスに対して,もしくは有能さのレベルに応じて与えられる報酬。例えば,能力給,歩合給など

この報酬構造と認知的評価理論から,仕事の楽しさが低い(内発的動機づけのレベルが低い)職種は外発的動機づけのプロセスが顕現的になり,仕事の楽しさが高い(内発的動機づけのレベルが高い)職種は内発的動機づけのプロセスが顕現的になるだろうことが予測される。また,課題随伴報酬の職種よりも,遂行随伴報酬の職種のほうが内発的動機づけプロセスの影響力が強いと考えられる。

職種A
職種B

上記の予測が,実際の職場場面で適用できるか,検討したところ次のようにまとめられた。

●仕事の楽しさが低く、課題随伴報酬の職種(職種A)

外発的動機づけプロセスが顕現的になっている

●仕事の楽しさが高く、遂行随伴報酬の職種(職種B)

内発的動機づけプロセスが顕現的になっている

ここでは,同一企業内の職務内容と報酬構造が異なる2職種についての研究結果を報告しているが,企業横断的に研究を行った結果でも同様の現象が確認された。すなわち,内発的動機づけと外発的動機づけの両プロセスは,産業・組織場面でも相補的関係にあることが示唆された。


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